強迫性障害(強迫神経症:OCD)の案内板。・。・。・。・。・
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森田療法 2009.1.12
1.生の欲望とあるがまま

人間には、生きていく上で、さまざまな生の欲望があります。食欲、性欲、睡眠などのほか、自己実現のための欲望、いやなことから逃げたい、人によく思われたい、嫌な面を見られたくない・・・など。
しかし、そのような欲望は、 現実の世界の中ですんなり実現できるとは限りません。また、2つの相反する欲望が両方あることも多いです。

[1]「森田療法」p12では、次のように書かれています。
「神経質(症)者は、理想型が高く、完全欲へのとらわれが強いために、常にかくあるべしという自分の理想的な姿を設定してしまう。しかし、我々が住む不条理の現実には、そのような都合のよい状態はないので、そこでかくあるべしという理想志向性とかくあるという現実志向がもろに衝突してしまう。」頭の中で描いてしまっている観念(理想)と、現実のギャップが大きければ、それだけ不安も大きくなります。

そこで、
あるがまま・・・事実をそのままの姿で認めること。希望と同時に生じてくる、このような不安や葛藤を「そのままに認め、受け入れること」。
という姿勢が、森田療法では大事だとされます。

あるがままの例: [1]p13
「苦手な上司と面接をしなければならないときに、会って自分の構想をよりよく披瀝しようと考える一方で、あの上司は苦手だからなんとかその場をつくろって逃げてしまいたいという考えも浮かぶ。これは両者ともに、その現実と直面している生の欲望なのであって、一方では、苦しくても自己実現をしたいという欲望と、他方で、苦しいから逃避したいという欲望と、両者ともにその人に付随する人間性なのである。そこで、森田は、低きにつこうとする欲望を「そのまま」にして、もう一方の自己実現の欲望を止揚(しよう:二つの矛盾した考えをより高い段階で調和させること)していこうとする欲望の方向性を考える。」

参考:自己不一致論
このような考えに似た視点としてカール・ロジャースの「パーソナリティー論」では、自己を次の3つに分けて説明しています。

現実自己・・・現実の世界で実際に行動してしまう自分の姿
理想自己・・・ 理想的な自分の姿
あるべき自己・・・このようなケースではかくあらねばならないという自分の思い込み・規範
このような自己が葛藤することから不快な感情が生じることを自己不一致論と言います。

自己概念と、経験という2つの知識があり、この2つが一致することもあれば、一致しないことも、誰しもあります。
一致する領域が増えていけば、葛藤が減り、安定すると考えられます。
そのためには、次の3条件が必要だとしています。
1) 真実・・・他の人の前に自分を隠さず、本当の自分を知っていること。
2) 受容・・・自分と異なる人格として他人の存在を認めることで、あるがままの他人を受容すること。
3) 共感的理解・・・他人を、外側から対象物として認識しようというのでなく、内側から、その人の住んでいる世界を感じとり、理解しようとすること。

1)〜3)は、森田療法の「あるがまま」と共通している部分があります。
2.とらわれと強迫性障害のしくみ

森田療法でいうとらわれとは、強迫観念という極端な不安がこびりついて、それに振り回されてコントロールできなくなってしまっている状態です。強迫性障害の場合、患者は自分がどこかおかしいと気づいているのに、何とかできないので、よけい葛藤を抱えてしまいます。
現実の世界とどこか違うように認識してしまっているためで、このようなひずんだ観念(=認知療法の認知の歪み)にとらわれてしまいます。

また、 [1]p103より、「人間はあることを考えながら、同時に多様な観念が脳裏に浮遊しているという、人間本来の原則を否定しようとしているがための「とらわれ」である。」というように、変な考えとはいえ、浮かんで当たり前のものを「あってはならない」と決め付け、排除しようと葛藤すればするほど、こびりついてしまうとらわれもあります。

なぜとらわれてしまうかと言うと、 それは「症状」や「認知行動療法」のページの図にあるような悪循環に、はまってしまうからです。

悪循環のように、一度、習慣になってしまうと、それを止めるのは大変です。
強迫の改善のポイントは、まずこのことを知り、強迫的な動機による習慣を増やさないようにし、最終的には今までの強迫的な習慣を現実社会に適応しやすい習慣に変えていくことを目指すことです。ただ、症状や治療法によって、そこに至るまでの段取りは異なります。

3.治療

あらまし
思い浮かぶ不安を無理に打ち消そうとすると、かえって不安はなくならないもので、そういった気持ちや自己の性格は「あるがまま」にしておき、正当(目的本位)な行動に移していくものです。
実際の行動(軽作業など)を通して、悪循環の習慣を、現実に適応できる習慣に改善して行きます。この点は、認知行動療法と共通しています。

入院の場合のおよその流れ:
1.絶対臥褥(がじょく:静かに寝ている期間) 5〜7日間
2.軽作業期 数日〜1週間
3.作業期 2〜3ヶ月
4.社会訓練期

森田療法でも、認知を修正するために、日記などを用いて思考の矛盾を認識するなどを行う場合があります。
外来ですと、日記や面接が主になるそうです。

自然治癒力
森田療法では、心(脳)の持つ自然治癒力を導きだことを目指します。([4]p27)
そのために、
@心を操作しないこと
A待つこと
B知ること
(基本的な知識をしるだけではなく、行動を通して身をもって知ることも含みます)

神経質な性格だからといって、必ずしも悪いわけではないので、それを矯正しようとはしません。むしろ細かい所に気がつくとかそれが長所になるケースもあります。悩みも、誰しもあって当たり前です。性格も悩みも「あるがまま」にし、自分で受け入れます。

感情の法則
そのように受け入れるために、まず基本となることは、「感情のしくみ」を理解することです。
曝露反応妨害法のページに載せてあります。

参考
リンク>森田療法 使われる用語などわかりやすく解説されているサイトがいくつかあるので、ご参考にしてください。

本>森田療法
上記は、次の本を参考にしました。
[1]岩井寛「森田療法」講談社現代新書824(1986)
[2]長谷川 洋三「森田式精神健康法―この名著が「自分のこころ」を強くする」知的生きかた文庫 改訂新版 2005)
{3] 大原健士郎「新しい森田療法」講談社+α新書(2000)
[4]北西憲二「実践森田療法」講談社健康ライブラリー(1998)
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