1 まず考えてほしいこと


・いろいろな段階・状態の人がいます。
精神科医に受診して、症状をできるだけ正しく診断してもらってください。

目次

1-1)精神疲労とは
1-2)自分だけで抱え込まない
1-3)ステップ1 現状への考え方
1-4)ステップ2 受け入れ
1-5)ステップ3

1-1)精神疲労とは

疲れには、身体的なものと、精神的な疲労とがあります。
精神的な疲労がたまると、うつ病・うつ状態などさまざまな精神の症状、身体の症状が現れることがあります。 かつては、神経衰弱と呼ばれた状態に当てはまることもあります。

症状

精神の疲労がたまり過ぎると、余裕がなくなり、人によって異なりますが、次のような症状が表れます。

気分・考え:
やる気が出なくない
自信がなくなる
自分の思うようにできないことが増える
イライラする、怒りっぽくなる
物事を悪い方に考えてがちである
自分に価値がないと考える
死にたくなる

体:
眠れない、寝すぎなどの睡眠障害
食欲がない、食べ過ぎる
疲れ
肩こり
頭痛、めまい

外との関係:
音や突然のことに敏感になってしまう
人と会うことや外出を避けたくなる
人が自分を悪く思っている・悪口を言われているような気がする

精神疲労のイメージ

脳の何かが乏しくなると、このような症状が出るとイメージしてください。何かは、はっきりとわかっていませんが、コップの水のように量が減っているイメージです。
コップ 精神疲労



1-2)自分だけで抱えない

精神の疲労は、通常は自然に回復しますが、たまると、回復に時間がかかります。上図のコップの水が、元に戻るには何週間、何ヶ月もかかるかもしれません。

・修復されるまでは、できることを少しずつ行い、無理しない方がいいです。
自分に合わない方法をチャレンジして、失敗を繰り返していると、かえって空回りして、自分をダメだと感じ、否定的な感情が増してしまいます。(学習性無力感)[2]

・医師などの専門家に相談してください。
医療機関に行きづらいようでしたら、まずは家族など周囲で信頼おけそうな人でもいいです。

・精神科の薬が効くこともあります。(薬を使うことで、上図のコップの水が溜まり安くなる場合があります。)

そして、次のステップ1-1,2,3の中から、できそうなことを試してみてください。




1-3)ステップ1 現状への考え方

1.脳神経は修復を必要としている

精神疲労の回復は、生きることの根幹(土台)となるものなので、何よりも優先してください。
家を建てるときにどの土台となるコンクリートがしっかり固まるまで待ちます。コンクリートが乾く前にいじってしまうと、後でその上に家を建てようとしてもうまく行きません。
「今は、神経を修復させるために、あえて時間を割くことが必要」と思ってください。

2.なるべく今、今日のことに注意を向ける―過去や将来はあまり考えない

向上心から、何もしないでいたら、自分はダメになってしまうかもしれないと思い、何かしないではいられない人もいるかもしれません。
しかし、精神状態が不調なときに、将来ことを考えても、否定的な考え・感情になりやすいですし、過去を思い出して、後悔することもあります。
そのため、あえて「今」に注意を向けるようにします。

3.嫌な気持ち、うまく行かないことはあっても自然

嫌な感じ、不安、すっきりしない中途半端な感じは、つらいでしょうが、なかなかなくならないものではないでしょうか?
すぐになくそうとすると、かえって思い悩んだり、つらくなってしまいます。
また、調子が悪い時は、とかく悪い方に考えてしまい、それに引っ張られそうになるかもしれません。しかし、できれば、そこですぐに何とかしようとせず、そののような気持ちをそのままにして、しばらく付き合っていく気持ちになれると理想的です。完璧にできる必要はありません。うまく行かないこともあるでしょうが・・・何はともあれ、とりあえず今を過ごすことを考えます。

4.疲れすぎないよう休憩、休日、睡眠(夜)を適度に取る

一般に、精神の病気にかかっているときは、睡眠をとることは大切です。眠れないときも、専門家に相談してください。
睡眠中に、脳細胞の数を増やす(外部リンク)ことがわかっています。
このように神経の修復は、脳で自動的に行われています。

5.活動的でないように見えて、実は大変な作業をしている

症状がひどい場合、つらい感情や嫌な考えに襲われ、心の嵐に出合っているような状態です。
しかし、山や海で嵐に出合った人が、下手に動かず、安全な場所でじっとしていた方がいいように、精神の症状でも重いときは、無理な活動は控えた方がいい場合があります。
つまり、病気や困難な問題を抱えているときは、山や海で遭難した人のサバイバルに匹敵するくらいの困難であることがあります。そのサバイバルで耐えている間に、外見では何もしていないように見えても、体の中では、神経の修復作業がたんたんと行われています。
ですので、今日1日を生き延びただけでも、「これで良し」としてはいかがでしょうか。

6.精神症状が重いときは、大きな決断はなるべくしない

特に急ぐ事情がなければ、そういうときは大きな決断はしない方がいいです。
もし調子が悪い時に、悪い方に考えてしまって、死にたくなってしまったとしたら、それはあなたの本心ではなく、症状によるものと考えられるので、真に受けないで、理由はともかく、自分を裁いたり、結論を出すことを先延ばししてください。そして、できれば、他の人に相談してください。



1-4)ステップ2 受け入れ

1.精神的な疲労は回復に期間がかかることを受け入れる

ゆっくりでも時間がたてば、やがてコップの水は増していきます。
急がば回れです。

あせって、格闘して、心をいじくってしまうと、水はなかなかたまりません。

2.症状に、波があるのは自然なこと


3.いい悪いという評価はなるべくしない

今の状況を、否定もせず、ただそれと共存するようにします。
評価することで、何とかしようと、もがきやすくなってしまうためです。

4.スムーズにでできないのには、理由がある

以前、すんなりできていたことが、時間がかかって、エネルギーを使ってしまうこともあるのですが、それは症状のせいです。他の人から見たら、ただの買い物や洗濯でも、実際は、ものすごく大変な作業をしているわけです。
車に例えると、強迫のときはローギアで坂道を登っているようなものです。症状を抱えつつ何かをするには、それだけエネルギーが余分にいります。

5.嫌な感情もあるままま

不安、嫌悪感、恐怖、罪悪感、嫌な感情があっても、直接、コントロールできません。何とかしようとせずに、できるだけそのまま放置するようにします。実際に事故、災害にあったときの恐怖と違い、症状による強い感情は、苦痛であっても、それ以上の実害はありません。



1-5)ステップ3

1.マインドフルネスを試してみてください。

ただし、幻聴・妄想や、トラウマを抱えているなど、症状によっては行うことが難しい場合もあります。

2.できれば昼夜逆転しない

睡眠障害があると、なかなか思うように眠れずに難しいことがあるので、その場合は無理しないでください。
午前中に起きて、カーテンを開けて、部屋に日光を入れる。窓際で、その日光を感じる。直接、太陽を見るわけではありません。ただ、窓際の明るさを目が感じて、起きるモードになることが大切なのです。(セロトニン参照)

3.他人と、自分を比べない。世間体も放っておく

過去の(スムーズにできていた頃の)自分と、今の自分も比べない。
人に理解してもらいにくい病気ですが、病気なのに「いい主婦」「体裁のいい人」であろうと考えても、体がついていかないこともよくあります。
家族以外の他人は、何か言ったとしても、あなたの人生に責任を取ってはくれません。他人の言うことを気にするあまり体調を崩しても、被害を受けるのはあなた自身です。
それよりも、自分自身に目を向けて、今できることを少しずつでも実行し積み重ねることが、回復につながります。



参考:

[1]Christine Purdon, David A. Clark, Overcoming Obsessive Thoughts: How to Gain Control of Your OCD, New Harbinger Publications, Inc. 2005年
[2]丹野義彦・坂本真士「自分のこころから読む臨床心理学入門」東京大学出版(2001)