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確認の場合
主に専門書[1]と経験から、まとめました。
1.カギの例
前のページ「図2 認知行動療法の基本モデル」を、カギの例に当てはめてみます。

ところが、強迫観念があると、
このような不安がよぎります。
そして、
本当にかかっているかドアノブを強く回してみる、
ドアをガタガタゆさぶってみる、
カギを何度もかけ直す、
などをします。=強迫行為

このような経験は多少なら、誰でもあるものですが、強迫性障害では、それにすごく時間がかかります

カギを行っているうちに、またガス栓や市内の窓が気になり(観念)、ドアを開けてやり直してしまう(行為)ように、いくつかの観念と行為が連なっていることもあります。このように、症状の細かい内容は、人によって違います。

それから、

感情・・・切迫感と、何とかしないではいられない衝動が強いです。

身体・・・緊張しています。そして、非常に疲れます

感情と身体の反応は、本当に事件や火災に巻き込まれたのなら、当然な反応です。しかし、強迫の場合は、過剰な反応です。p75

*ポイント*
・外出のときに不安がある人でも、帰ってきて部屋のカギを開ける場合は、簡単に開けているのでは?
・火のしまつも、部屋にいるときなら、それほど気にしていないでしょう?

出かけるときは、「もしも***になったら・・」という強迫観念が伴うから、 簡単な作業が、難しいように感じられます。 そして、帰ってくるときは、身体感情の状態は、緊張も衝動もなく、平静なはずです。

2.しくみ
確認の強迫は、カギの他にも、いろいろなこと(トリガーに対して)体験する人がいます。

ガスの元栓、火の始末、水道の栓、トイレを流したかどうか、ふたを閉めたかどうか、落し物をしていないか、字がきちんと書けているか、知識が正確かどうか、・・・・

強迫行為は、単なる点検の他、調べたり(学問的な興味によるのではなく安心したいという動機による)、元の場所に戻ったり・・・ということも含みます。

しかし、その原理は、共通しています。
2-1)心理
・カギの例のように、閉める行為自体は簡単です。でも、閉めても、確かに閉まったたという気持ちが得られません。ミスをしていないという自信が持てません。=不確かさ→恐怖や衝動をもたらす。[1]p28-

確認の恐怖は、専門書[1]によると、次の3つが考えられます。

→もしミスがあれば、強迫観念によって、すごい災害になってしまうかもしれないという思いがよぎります。=安全への恐怖
→誰かを事故に巻き込んでしまうのでは?罪悪感を感じる。=加害の恐怖
→不完全や、十分でない感じ、判断に困ることによる衝動=戸惑いの恐怖

また、強迫性障害の悪循環が習慣となってしまうと、
→以前も、同じような場面で何度も繰り返してきて、すごくエネルギーを使ってきたので、今回も一回で済むはずがないという衝動も出ます。

緊張のしくみ:(参考:認知行動療法のページ>図3
・普通の人なら、何か行為をやり終えると、それまで払っていたその行為への緊張はなくなり、落ち着きます。しかし、強迫行為では、一つの行為を終えた後でも、このような緊張や衝動がいつまでも残り、十分な感じがしません。そして、行為から離れたいのに、引き戻される感じになります。

2-2)記憶 [注1]
「さっききちんとかけた」と言うような短期記憶自信がなくなります。また、何回もやっていると、どうすれば十分なのか、何回目が正しかったのかわからなくなることがあります。

例えば、子どものころ字の練習で、何度も書いているうちに、どの字が正しいか感覚的にわからなくなった経験はありませんか?それに似ていますが、強迫の場合、もっとせっぱ詰まった感じです。

患者さんの中には、若年性認知症なのではと心配になる方もいるのですが、強迫に関係ないことでは短期記憶に問題がなく、確認強迫では誰でも体験する状態です。

2-3)緊張のため、強迫行為で集中している部分(中心視野)しか目に入らなくなります。(写真1,2)

写真1 普通のときの視野

写真2 強迫行為中の視野
例えば、こんな感じ。
周辺視野が目に入りません。
そのため、視野に入らなかったところで、見過ごしたものがあったのではと、感覚に死角の場所ができて、ミスの可能性が常に残ってしまう感じです。
とらわれて、余裕がなくなっています

3.改善法  本[1]

1)自分の症状を知る。
どれが、強迫観念か、強迫行為かを、自分を観察して、よく調べます。
・確認の最中、頭の中で、例えば、「5数えたらいいことにしよう」と考えるように、強迫観念に反応した考えをしてしまうことも強迫行為です。
・確認したくなるもの・場所(トリガー)に出会うことを避けているのも回避という強迫行為です。

専門家による治療では、Y-BOCSなどを用いて評価します。

・自分の症状の動機が、逃げのような否定的なものや、不合理なものかどうかを考えてみるといいです。

2)曝露反応妨害+気づき(ERPA)
認知行動療法の技法である

曝露 (エクスポージャーExposure)
反応妨害
(Response Prevention)もしくは儀式妨害 (Ritual Prevention)
・気づき
(Awareness)

を組み合わせて行うものです。
治療では、自分の症状の中から、不安階層表などを使って、特定のトリガーに対し行います。

曝露反応妨害・・・確認の回数を減らしたり、まったくしないで、そのときに生じる強迫観念(恐怖や衝動)にあえて、面と向かいます。

・確認の場合、「エクスポージャーと儀式行動の禁止の区別もつきにくいでしょう。」p271「反応妨害が自動的に曝露になります。トリガーに出会い、確認行為を止めないと曝露にならないためです。」p237;本[2]

想像型エクスポージャー・・・「火の元を確認しなかったら、火事になる」というような強迫観念は、実際に家を燃してみるわけにはいきません。そこで想像で、わざとどんな災難が起こるかじっくり考えてみる方法です。それを紙に書き出して、後で読み返したり、録音したものを、何度も聞く方法もあります。

・曝露反応妨害では、そこに戻りたい、もっと確認したいというもやもやした気持ちを残したまま、不安や衝動と戦わず、やり過ごす感じです。時間とともに、不安はゼロにはなりませんが、きっと減ります。できればSUDを測りながら行うといいです。このように、衝動が残った中途半端な状態に慣れるような訓練をします。目的本位と言って、外出時の確認なら、本来向かうべき行き先に向かって歩き出したり、次の仕事に進みます。

すると、忘れた頃に、SUDは下がります。忘れた頃と言うのがミソで、下がれ下がれと意識するのも反応で逆効果です。この訓練を続けることでやがて「夜明けの吸血鬼のように、OCDは消えうせます。」[1]p75

気づき・・・マインドフルネスという技法を取り入れたものです。
強迫の症状の最中は、 余裕がなくなって、意識のほとんどを確認に向けているため、脳の意識(リソース)を他に分散させるために行います。
エクスポージャーの間、意識を、考えていることや、感情体の各部の状態に、ゆっくりと向けてみます。それらの状態をあるがまま(Beingモード)に観察し、それが良いか悪いかという判断をせずに、ただ、感じるだけでいいです。
怖い想像をしてしまっても、そのまま。ドキドキしていても、そのまま。腕、肩、顔、お腹、足、体のあちこちの感覚がどんなかなぞってみます。(ボディ・スキャン
不確かな世界の生活、将来恐ろしいことが起こるかもしれないというイメージをわざと思い浮かべます。そして、「そうなるなら、なればいい」などと言い、その感情を受け入れます。
そして、ただ、通り過ぎるだけでいいです。何かを意識して変えようとしてはいけません。また、どんな嫌な感情に出くわしても、やめません。[1]p75-83

以上の組み合わせを1日に最低1-2時間、週に5-7日行います。[1]p61

4.こんなコツもある

4-1)じっくり
確認したくなるときは、この行為を早く終わらせたいとか、何とかしなくてはとかという気持ちにかられてはいないでしょうか?むしろ初めの行動をじっくり行い、自分があせっているようなら、一呼吸置くような感じの方がいいです。

子ども向けの本ですが[4]p255には、次のように書かれています。
「ドアにカギをかけるとき、もっとゆ・っ・く・り動くように始め、「OK。脳。ほらチャンスだよ。注意を払って、もう繰り返さない!私がドアにカギをかけたってわかる?今、わかって。私はもう一回するつもりはないから。」と脳に言い聞かせ、次の行動に移りました。
気づきのページ>2-2)に書いたように、これは脳の過剰反応なので、真に受けません。そして、1回目の本番をじっくり行うことで、かえって繰り返しがいらなくなります。

4-2) 確認が要らない普通のときとの比較
例えば、戸締りやガスや水道の栓なら、出かけるときではなく家にいるときに、やってみます。
どうでしょうか?
それなら、緊張が伴わないし、簡単な感じでは?この感覚と、強迫行為中の感覚とを比べます。

そして、普通ならどういう行動なのか、あえて調べ、言葉で表現してみます。
カギの例なら、「カギを入れて、一回右に回す」だけといった具合に。

その平常時での方法を、実際に外出するときに思い出し、こんなやり方でいいと言い聞かせます。強迫行為に長時間かかっていた人は、楽な方法をすると、こんな簡単でいいわけがないと違和感があるはずです。でも、合理的な方法とは、そのようなものですので、それが習慣となるよう練習します。

4-3)実際に、カギをかけ忘れた場合、火をつけたままの場合、はどうでしょうか?
そいう言うときの方が、かえって「まだかけていない」と自分に言い聞かせいるとか、もっと記憶がわかりやすいのではないでしょうか?かけていない強迫観念の場合、ミスしたかも・・・のように、もっと不確かな不安で、これが強迫性障害の症状の特徴です。

4-4) 緊張のために、短期記憶に自信がなくなることが一因です。ですので、例えばカギを閉なら、その後に、あえてカギを閉めたと言葉で、覚えこまそうとします(心理学の記銘)。試験勉強で、暗記するのに何度も復習したような感じです。この際、その動機をチェックして、恐怖心や逃げの動機でなく、これもじっくり覚えようと言うつもりでします。

4-5)強迫行為が習慣になってしまうと、普通のやり方がわからなくなってしまいます。誰か、打ち明けやすい人に、普通のやり方の見本をやってもらうのもいいかもしれません。(行動療法でモデリングと呼ばれる技法です。)
ただし、一度だけです。この人に、毎回、カギをかけるたびに、替わりに確かめてもらうのはだめです。

4-6)反応妨害では、もっと確認したいという気持ちを残したまま、振り切ります。あとは、ひたすらどのような不安が襲っても、何が起きても「あとは野となれ山となれ」「どうにでもなれ」の心境でしのぎます。([1]p75)起こるかもしれないという不安を何とかしようと言うのではなく、「来るなら来い!」の心境も、逃げとは逆の動機でいいです。

4-7)私自身の体験では、当時は一人でやっていたし、今ほど情報もなかったので、本に書いてあるほど簡単に強迫衝動は消えませんでした。ある程度の期間、効果を信じてひたすらトレーニングすることが必要です。
ただ、この頃は、個別相談の中で利用者に、上記の方法をアドバイスしていて、理解していただける方には効果があるようです。

注釈

[注1]確認強迫は、記憶の欠陥によるという仮説を調べる研究は行われていますが、健常者との明らかな違いは見出されてはいないようです。この他の実験報告によると、確認を行うと、健常者でも、自分が確認したという記憶の鮮明さや細部が失われ、(おそらくその結果として)記憶への自信が低下するそうです。[5]p90

強迫性障害の人の記憶への自信のなさは、強迫観念が生じるトリガーに出会ったときだけ生じます。通常の落ち着いているときは正常であり、そこが認知症などの記憶障害とは違います。そのため、実験が難しいのではと思います。参照[3]

参考

[1]Paul R.Munford,Ph.D. Overcomig Compulsive Checking. New Harbinger Publications, Inc.2004年
[2]エドナ・B・フォア博士&リード・ウィルソン博士著、片山奈緒美訳「強迫性障害を自宅で治そう!」VOICE(2002年)
[3]CNS Forum>Moritz S, Jacobsen D, Willemborg B, Jelinek L and Fricke S; European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience 2005; 1-5.
A check on the memory deficit hypothesis of obsessive-compulsive checking
[4] Tamae E.Chansky,Ph.D., Freeing Your Child From Obsessive-Compulsive Disorder, THREE RIVERS PRESS, 2000
[5]原田誠一編「強迫性障害治療ハンドブック」金剛出版(2006)

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